回顧録

基本的に思い出を吐き出しています

胃カメラと僕

からだが丈夫ではない訳ではないが、メンタルと消化器が非常に脆弱である。


過去に3度胃潰瘍をやっており、すべてストレス性であったからまぁ、ストレスに弱い。
前職はこの胃潰瘍を理由に休職してそのまま退職したが今思えば傷病手当てとかもらっておけばよかったですね(職場との関わりをとにかく早く絶ちたかった)



ともあれ胃潰瘍である。
確か2016年の初頭、医師におそらく胃潰瘍であるから胃カメラをやりましょう、いついつに予約を入れるから来てくださいねと言われた。


当日、口に含んで飲み込まないようにと説明を受けながら口と喉の間を麻痺させる薬品を口に含ませられる。
看護師さんは5~10分くらいしたら来るから待っててねと言い、自分をひとり誰もいない廊下に残し去っていった。


誰もいない廊下である。
誰もいないのだ。


最初は口と喉の境目で薬品をごろごろやっていたがだんだん唾液が溜まってくる。
下手に動かすと溢れそうなのでそのままぼんやりして看護師さんの帰還を待つ。


看護師さんはなかなか戻らない。


口を閉じて上を向いていたのだが口内のキャパが足りなくなってきたので上を向いたまま口を開けて待つ。


看護師さんはまだ戻らない。


表面張力起きてるんじゃないかレベルになってきたが未だ廊下には誰もいない。


鼻で呼吸する際に鼻に液体が入ってきてしまい噎せそうになったが必死でこらえる。


つらい。


その噎せそうになった衝撃で口から液体がこぼれて手で押さえる。


看護師さんは未だに来ない。


時計を持っていないし手が塞がっているからポケットに入っているスマホで時間の確認もできない。
絶対10分は経っている。


自分はノーマルなプレイしかしたことがないから実のところはよくわからないが、放置プレイって苦しいなぁ今度エロ本読むときに今日の日を思い出してしまいそうだなぁと悲しくなったりした。


口から溢れた液体は手の抑えではもうどうしようもなく、指の間から耳まで伝わり気持ち悪くて仕方なかったが、
ノーマルなプレイしかしたことはないが普通に健全な変態なので少々性的に興奮したのも事実である。


もう、廊下にぶちまけようかなと思案していると

「あれみどりちゃん、まだ胃カメラやってないの?」

先ほどとは別の見知った看護師さんが現れた。


うすピンクの制服に身を包んだ彼女が本当に美しく、救済の形をして見えた。


白衣の天使って本当にいるのだな。
うすピンクだから白衣ではないのかもしれない。


自分の状況を見た看護師さんはあわてて洗面器を持ってきて吐き出させてくれた。
その上液体まみれの顔や首をティッシュで拭ってくれた。
彼女は既婚者だと知ってはいるがあまりにいっぱいいっぱいな状況だったので好きになってしまいそうだった。


「いつからここにいたの?」
「9時ちょいにはいましたね」
「今9時半だよ!?」


本当に放置プレイをされていた。
嬉しくない。
病院で看護師さんに放置プレイをされていたなんて、文字にすればこんなにも甘美であるのに。


とりあえず胃の動きを抑えるという注射を打たれ、やっと胃カメラの検査室に入ることが叶った。


担当の医師は50前後の男性で、なにやら軽く問診と検査の説明をされた。
外部の専門医らしく、この病院に長らく通っているがはじめて見る医師であった。


マウスピースをくわえさせられ、口のなかに管を入れられる。
喉の麻酔をしているから圧迫感はあるが痛くはない、と医師は言っていた。
言っていたのだ。


ところで自分はノーマルなプレイしかしたことがない普通に健全な変態であるので、たまに気持ちが駄目になると気持ちを上げるために強制的に嘔吐したりしている。
性的なあれそれを知る前の中学生の時にこれに目覚めてしまったのでもうだめな性癖です。
当時も月1回程度は喉奥に指4本くらい突っ込んでいたのでわりと喉に異物を入れ慣れていると思っていた。


胃カメラの管めっちゃ苦しい。


「今から嘔吐アクメキメます!」って気持ちを作って喉に指4本突っ込むのと、いきなり喉に管突っ込まれるのはまず心構えが違うし、
そもそも医者は痛みはないと言っていたのだ。


のちにこの話を医師となった知人に話したところ
「おそらく喉の麻酔が唾液で薄まってしまい効果がほぼなかったんでしょうね」
とのことだった。
やはり放置プレイはよくないものだったのだ。
今度からおかずになることはない。


とにかく痛い、苦しい、このまま殺して欲しい、なんか耳なりしてきた、先生がなにか言っている


「ここ食道だよ~~~あ~~~~~~食道、いやぁキレイ、キレイだね……いいねぇあ~~~~~~いい色してる……すごくキレイだよ……」


自分は今何をされているのか。
グラビア撮影か?篠山輝信かなにかに消化器グラビアを撮られているのか?
何事だ?????


「胃に入ったよ、あ~~~~~~ここだ、ここだねぇ、苦労したんだね痛かったんだねでも他のところはすっごくきれいだよ、ほらぷりぷりだよ、見てごらん、キレイだよ……」


ほぼノー麻酔で視界がまともに機能しないほどの痛みのなかモニターを見る余裕などはなかった。


「はーいじゃあ撮るね。あ~~~~~~はい、こっちキレイだからキレイなところも見て欲しいから撮っておくね。あ~~~~~~いいねぇキレイだねぇ」


やはりグラビアの撮影だったようだ。
検査後、現像した写真を貰ったがフルカラーの己の内臓はピンクで瑞々しく正直ちょっとエッチだった。


苦しみのなか、「今後触手のエロで口から内臓まさぐる感じのは苦しくて読めなくなるんだろうな」と悲しみに暮れたりしたがともあれ検査は終わり、結果を聞きその日は医者をあとにした。


数年後、また胃カメラを飲むのだが、
その際はちゃんと麻酔は効いており「自分がもしもエロ漫画家になって触手エロを描くこととなったら触手からはちゃんと麻酔的な粘液を出す内容にしよう」と強く思いながら内臓をまさぐられていた。
それよりもその検査の際、男性の看護師さんが自分を安心させるかのようにずっと背中を撫でてながら「大丈夫?」「苦しくはない?」などと声をかけてくれていたのだが
顔が江口洋介に非常に似ており、「触手に襲われた受を介抱する攻の江口洋介のBL」を錯覚していた。



胃カメラ楽しいので機会があったら鼻から入れるタイプではなく口からのを是非経験して欲しい。
年々技術が向上しているそうだが2年に1度程度しか飲まないので正直よくわかっていない。
鼻からのは目に刺さりそうなゾクゾク感が楽しめるのでそれはそれで楽しいです。
でもみんな胃カメラ飲む必要がないくらい健康に生きようね。